指導ガイドライン
株式会社信州アウトドアプロジェクト
1.学習の個別性
野外教育プログラム(野外研修)は、個人および集団の具体的な体験をもとに学習する「体験学習理論」を基礎としています(Dewy,1938)。そのため、目標達成に資する学習内容で構成している一方で、それぞれの集団の体験および個人の学習内容と学習量は、均質・同一ではなく個別性の高いものとなります。
2.指導の個別性
野外教育プログラムを指導するファシリテーターは、下記の理論に基づいて最適なリーダーシップスタイル(指示型、提案型、参加型、委任型)を選択しています。グループの成熟度(形成期、葛藤期、安定期、成熟期、解散期)に応じて選択するシチュエーショナルリーダーシップ理論(Hersey and Blanchard,1982)参加者を取り巻く条件(環境、参加者個人、グループ、指導者、危機的場面)に応じて選択するコンディショナルアウトドアリーダーシップ理論(Priest,1989)また、野外リーダーシップの構成要素に指導者の気質が含まれることを認めています。(Jack,2003)。よって、それぞれのファシリテーターは、画一的なリーダーシップスタイルを発揮するのではなく、参加者の状況や指導者の特性に合わせて最適なアプローチをいたします。
3. 環境の絶対性
野外教育プログラムは、人間が作為できない天候やコンディションの中でおこないます。そうした環境の中で、指導者は様々なリスクをコントロールし、参加者にとって最大限の学びを得られるよう努めます。しかし、指導者及び参加者は、自然環境でおこなう特性上リスクが伴う活動であることを理解し、自身による自身の安全確保の意識を持つことが必要です。
4.プログラムの柔軟性
野外教育プログラムは、目標の達成に向けて事前に計画されます。しかし、上述した体験学習理論に基づき、参加者の成長のためにより望ましいと考えられる場合、または、様々なリスク要因(例えば、天候、健康、事故など)をコントロールする必要性が生じた場合、適宜、柔軟性をもってプログラムを変更することがあります。その際、ディレクターは、貴社または貴校現場責任者と協議の上で、変更の有無を決定いたします。但し、変更に緊急性があり、変更のための協議が物理的に不可能である場合、この限りではありません。
5.ファシリテーターへのクレーム
野外教育プログラムにおいて、ファシリテーターは、上述したすべての不確実性に対して、野外プログラムの諸理論、個人の経験・能力を統 合し、そのとき考えられる最適な判断に努めます。しかし、貴社または貴校の研修担当者がご自身の判断と大きく異なると感じられた場合、 まずはファシリテーター本人に直接的に伝えるのではなく、研修企画運営ディレクターに遠慮なくご意見をください。ファシリテーターの判断を乱す要因は、結果的に参加者の学習効果に悪影響を及ぼす可能性があるため、万全を期したいと考えます。また、研修企画運営ディレクターの判断に疑問や不満が生じた場合は、遠慮なくご意見ください。
6.危機対応
6-1.都市救急法適用状況
野外教育プログラム中の都市状況下(都市部や都市に近い自然環境下で、救急車とAEDが要請可能な状況下)で発生した事故に対しては、貴社または貴校の規定した医療プロトコルや緊急時対応マニュアルに従い、バイスタンダーとして国内で認められているファーストエイドを実施します。尚、実施に伴う法的責任につきましては、刑法第37条(緊急避難)および民法第698条(緊急事務管理)に準じます。
6-2.野外救急法適用状況
野外プログラム中のウィルダネス状況下(厳しい自然環境下において、医療従事者による処置を受けるまでに長時間を必要とし、持ち合わせている医療器具に限りがある状況)で発生した事故に対して、別紙野外研修医療プロトコルに従い処置を行います。また、処置の前提として、日本国内では医業(医療従事者が「業」として医療行為を行う)以外のあらゆる医療行為(都市下でのCPR, AEDを除く)を保護する法律がないこともあらかじめ認識しなければなりません。
7.学習効果の代償作用
野外教育の効果には、プログラム、参加者、指導者、環境の4つの要素が影響を与えます。その一つが効果に対して反作用に働いた場合、残りの3つの要素が効果を高めるように作用します。例えば、天候がよくない場合、参加者は好天時よりも健康の維持に努力します。また、参加者が荒天に対応できない場合は、指導者の介入の程度を増やします。一つの要素が不十分でも、他の要素がそれを補い、事前に設定した高い効果を維持することが期待できます。
(以上)